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短めの一次&二次創作を思いついた時に更新します。本館はプロフィール参照です。
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序章・1+第一章一話
序章が短いのでまとめてますが、別(一話ずつ)とお考えください。

どうぞー

 


 
 
序章・1
 
私は全ての人間が嫌いです。
嫌いです、嫌いです、嫌いです、嫌いです。
 
どうしてって?
だって、周りの人たちは、わたしよりすごい人ばかりだからです。
私より頭がよくて。
私より運動神経がよくて。
私より明るくて。
私よりスタイルがよくて。
私より美人で。
私より器用で。
私より面白くて。
私よりずっとずっと魅力的な人間しかいません。
 
このままだと、私は自分のことを嫌いになりそうです。
嫌いになりたくありません。
だって周りの人が、『私なんかを好きなはずがないから』―――『私だけは私を好きでいたいのです』。
自分のどこにも魅力なんてありません、それでも、私は私のことが好きでいる必要があるのです。そうでなければいけません。
でも、周りの人は私よりすごい人しかいないから、だから、私はみんなが嫌いです。
全ての人間が嫌いです。
嫌いでいないと、私は代わりに自分を嫌いになってしまうから。
 
それなのに。
そのはずだった、のに。
今の私はおかしいです。
他の人なんて嫌いなはずなのに―――
あの人から、目が離せなくなるのです。
まるで魔法にかかったように、吸い寄せられてしまうのです。
 
これが噂に聞く、恋なのでしょうか?
そんなこと信じません。嫌です、だって―――
それは、私があの人のことを好きだということです。
あんな私よりずっとずっとずっとずっとすごい人のことが好きだなんて、私はどうすればいいんですか。
 
このままじゃ、私は自分を嫌いになってしまう。
あの人を好きになったら―――あの人を好きになる分だけ自分の醜さを、愚かさを、小ささを、役立たずさを自覚して、私は私のことが嫌いすぎて壊れてしまいそうです。
 
あの人が私を好きになってくれるなんてありえません。この世界に、こんなだめな私を愛せるのが私以外にいるはずはありません。
だから―――嫌です。
私は、どうすればいいのかわかりません。
 
このままじゃ―――
 
私は私を、嫌いになってしまいそう―――!







----------------------------------------






ああ、こいつも私が好きなんだ、そう思った。
私を見て顔を赤らめ、何かを伝えようと口を動かす。
私を前にすると何も言えなくなるタイプと、やけに饒舌になるタイプがいるが、この騒がしい少年は後者に該当する、それだけだ。
―――俺、都山さんのことさ、好きなんだ。
ほら、やっぱりだ。
私の美しさの前には、どんな男もひれ伏すだろう。当然のことだ。
本当ならば私に声をかけることすら許されないが―――私は女神の優しさでそれを許容。
私は神であるが故に特定の男性と交際することはできないので、断ることにはなってしまうのだが。
だから、私は今日も同じ言葉を紡ぐ。
女神にふさわしい慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、決まり切った言葉を口にする。
『本当にありがとう。すごく嬉しいわ。でも、私は今特定の誰かとお付き合いするつもりはないの』
私に思いを寄せる男全てに言い続けてきた―――定型文のようなものだ。
これ以外の言葉が私の口から出ることはないし、これが断る中でも一番人間どもに優しいやり方だろう、そう思っていた。
 
―――そう、その、つもりだった。
 
『本当にありがとう。すごく嬉しいわ。でも―――』
その言葉は、少年の二の句に阻まれて、
 
 
『一番好きなのは―――都山さんの―――』
 
 
……私はその日、初めて―――返すべき言葉に『迷ってしまった』。
 
 
女神と下僕・2
 
平日という言葉は、平凡な日と書く。
だから木曜日の今日は、二重の意味で平日だった、と言える。
いつもと何も変わりはしない。
私はあの馬鹿を蹴り倒し、殴り飛ばし、叩きつけ。
あの馬鹿はいつものようにくだらないことをつらつらと垂れ流すのだ。
……馬鹿が、いつもと違う場所を指定したこと以外は。
「……あ、留衣、ちょっと図書館行きたいんだけど行っていいか?」
馬鹿は、教室の自分の席で、帰り支度をしながら私にそう声をかけた。どことなくテンションが高い気がするが、興味などない。
……珍しいこともあるものだ。そう素直に思った。
この馬鹿は頭が悪い。とんでもなく悪い。普段はろくに勉強もしようとしないので、毎回赤点だらけなのだ。
これだけ喋れるのだからそれなりに頭の回転速度は速いのかと初めは思っていたが、そんなことはなかった。こいつはただマシンガントークなだけで、頭は微塵も使っちゃいない。思い浮かんだことを適当に話しているだけなのだろう。ある意味特技なのかもしれないが、私にとってはくだらないだけだ。
そんなこいつが図書館に行きたいだなんて、初めて聞いた。……何かあったとしか思えない。
「……理由は?」
思わず冷静に問い直してしまう。
それくらい違和感があった。
「いや、ちょっと借りたい本があって」
こいつも本など読むのか、初めて知った。
もちろん私は神として、必要な分の教養は身につけている。当たり前といえば当たり前だろう。
こんな馬鹿がどれだけ努力したところで私には遠く及ばないのは目に見えているが、まあ下僕が少しでも成長したいという気持ちになったのなら、私は女神としてこいつを見守る義務があるだろう。
「……構わないけど」
「え、いいの?絶対初めは『私に命令するなんて偉そうに』って言うかと思ってたよ」
こいつが無礼なのは今に始まったことではない。
私は心が広いんだ、そんなことで文句なんて言わない。
「……いいから行くわよ、一秒でも遅れたら屋上から突き落とすから」
「何そのむちゃくちゃな一秒ルール!?どんなヤンデレゲーでもそんないきなりバッドエンドにはならないって!」
……どうしてこいつは何でもゲームに例えたがるんだ。
こういう奴のことをゲーム脳と言うのだろうか。
「世の中には異性と会話を交わしただけで殺されるゲームもあるかもしれないのに」
「おにちくすぎるだろ!」
「あと、五月蠅いから一言喋るたびに1000円ずつ私に支払うこと」
「ちょっと待って何それりふじ、……、……っ」
イラっときた。……落ち着け私。
この馬鹿……すんなり黙りやがった。
お金は支払いたくないようだ。
やっぱりこいつは私の前で意図的にあんなくだらないことを喋っているらしい。どうして私の前だといつも以上喋るのか、迷惑極まりない。
わざと私の前で騒ぐとはいい度胸だ。
いつか殴る。蹴る。ほうってはおけない。これは教育だ。馬鹿なこいつに神たる私が直々に教育してやるのだからありがたく思いなさいよ。
どこか釈然としない気持ちが残るが、我慢だ。こんなちっぽけな屑のような存在に女神が腹を立てるべきではない。
慈悲の心で接するのだ。
そう言い聞かせながら―――しかし馬鹿の足先だけは思いっきり踏みつけてから―――私と馬鹿は図書館に向かうのだった。
 
「ふふひひひ、楽しみだなあ。図書館に行くの」
馬鹿は、私の前をにやにやと笑いながら歩いていく。それにしても、気持ち悪い笑い声だ。
いつもなら私の隣に並ぼうとする(無論この馬鹿は下僕なので私の隣など許さないが)のに、何があったのだ。
……違う。別にそれが寂しいわけでも悲しいわけでもない。当たり前だ。私は女神なのだから。
「なあ、留衣~」
いやにテンションの高い馬鹿から何か嫌な予感がするのは何故だろう。
図書館にあいつがここまで喜ぶものがあるとは思えないが……。
聞くかとも思ったが、面倒になってやめた。あの馬鹿に構う必要はない。勉強さえするようになってくれればそれでいいのだ。
「……何」
「いや、別に特に何かあるわけじゃないけど。なんとなく名前を呼びたくなって」
……殴り倒してやろうか。
しかし、よく見ると少し先に見知らぬ学生が2人立ち話をしている。見られたらまずいので、ぐっとこらえる。
いくらこいつへの指導のためとはいえ、女神が人間に暴力をふるう姿など見せたくないし、見せるつもりはない。私は人間の妄想を打砕いたりはしないのだ。
「……あっそう」
馬鹿は私の言葉に傷ついた様子などなく、更に機嫌よさげに歩き続けている。
……なんだか、疲れてきた。
装甲くだらないやり取りをしているうちに、図書館に到着する。
「お、いたいた」
馬鹿は図書館に入るなり、きょろきょろと視線をさまよわせ、そして一人の少女で止めた。
カウンター席に座っている、おそらく図書委員だろう。
地味な少女だ。私などとは比べるまでもない。
どこにでもいそうな―――それでいてどことなく気の弱そうな。
「和香(のどか)。例の本借りていいか?」
馬鹿は彼女につかつかと歩み寄って行き、読書の真っ最中らしい彼女の頭上から声をかける。
……こいつは一体どれだけの知り合いがいるのだろう。
びくり、と少女の型が揺れた。
「……あ、せ、せん、ぱい……」
視線を泳がせながら、少女は馬鹿、そして私にちらちらと視線を向けた。
「は、はい……」
少女は私と馬鹿の方を見ながら、なぜか頬を赤く染め、何やらカウンターの下を漁りだした。
しばらくごそごそとしていたが、一分もたたないうちにそこから一冊の本を取り出し、馬鹿に手渡す。
「ど、どうぞ」
声が上ずっている。顔も赤い。もともと気の弱そうな、というか、内気そうな子ではあるが、それだけが理由なのだろうか?
……少なくとも、付き合いにくいタイプだ。
少女が差し出したのは、大きめの雑誌だった。
表紙にはオレンジ色の髪をした気の強そうな少女がでかでかと映っている……って、ちょっと待て、おい。
なんだこれは。
……何なんだこれは。
嫌な予感しかしない。
どう考えても参考書の類には見えないが―――
「サンキュー!いつも悪いな和香。だいたいさあ、ここの先生もひどくねえ?なんでアニ○ディ○買ってるくせに並べてくれないんだよ。ぐちゃぐちゃにするからとかポスター引っこ抜く奴がいるとか言ってたけど俺はそんなことしねえよ!第一本当に欲しいピンナップが付録だったら俺は読書用と観賞用と実用の3つ買うっつうの!おかげで和香に手間かけさせなきゃならないしさあ。あ、あれだ、純粋な女の子なら実用って何に使うの?とか聞いちゃだめだぜ☆
……まあいいやそれはおいておいて。さてさて中身でも観賞しますかね。表紙は、お、やっぱりアスカか!劇場版は神すぎるな……あとは中にけいおん!の水着ポスターでもあったら最高だな、澪は俺のよぐふうっ!」
 
……馬鹿だった。
こいつが勉強でもすると信じていた私が馬鹿だった!
図書館で参考資料でも借りるつもりだと思い込んでいた私は本当に馬鹿だった!
所詮こいつは馬鹿なのだ。期待するだけ無駄だった。
女神たる私がこんな無駄なことに時間を浪費してしまうなんて……屈辱だ!
 
「る、留衣不意打ちはやめてって……ってあれ、アニ○ディ○は!?……あ、あったあった、破れてないな……よかった」
馬鹿は自分が吹っ飛ばされたと同時に床を滑った雑誌が無事なことを確認し、溜息をつく。
……なぜだろう、また殴りたくなってきた。
 
「……せ、せんぱい、大丈夫……ですか……?」
「ああ、余裕余裕。俺こう見えても……ん、見たまんまか?まあいいや、体だけは丈夫だし。健康優良児だし。食欲も睡眠欲も性欲ももてあましている健康的な高校生男子だからノープロブレムだ。和香は大丈夫か?」
馬鹿は言葉通り元気だけは有り余っているらしく、ズボンの埃を払いながら笑いながら少女に声をかける。
「あ、は、はい……」
和香、と言われた少女は―――馬鹿にそう声を掛けられ、私の顔色を窺うような態度を取ったのち―――恥ずかしそうにうつむいた。
「……だ、大丈夫、です……ありがとう、ございます……」
そして、また私にちらりと視線を向ける。
臆病な子犬が、悪戯をとがめられやしないかとびくびくしているかのようだった。
 
何故か、無性にいらいらした。
……なぜだろう、本気で殴りたくなってきた。
もちろん、この少女をではない。私がいらいらしているのはこの少女にではなく、当然あの馬鹿に対してだ。当然だ。
完膚なきまでにこの馬鹿を粉砕してやりたくなってきた。
帰りたい……この場から早く立ち去りたい。なんだかこの場にこの馬鹿と一緒にいる、そのことが無性に苛立たしく思えてきた。
理由は分かっている。……こいつが、私に恥をかかせたからだ。それ以外にはありえない。
 
「つうことでどうもな、和香!いや、むしろこれからはのどっちと呼ばせてくれ!おはようのどっち!じゃあな!」
相変わらず訳の分からないことを口走りつつ、馬鹿は上機嫌に図書館を出て行った。
……縛り付けてでも図書館で勉強させるべきだっただろうか。こいつを真人間にするのが神たる私の役目だからだ。
そう思ってはいたけれど、私は、あいつを止めなかった。
 
―――別に、図書館にいるとあの少女と話すから、とかそんなことではないのだけれど、何となくあの少女はやりにくい。
あのおどおどした喋り方が、妙に気に障るのは、別に馬鹿の知り合いだからだとかそういう理由ではない。
もっとも私は神なんだ、あれくらい許容しないといけない。
あの女だろうと誰だろうと、全ては私以下なのだ。自分より低レベルな人間に本気になることなんてあってはならない。
この馬鹿は下僕以下の下等生物だから、強く私が指導してやらなければいけないが、他の人間には慈悲を持って接するべきだ。
それができるのが、私と言う現代の女神なのだから。
だから―――苛立ってなんか、断じてない。
……ない、ない。ない。
 
「……痛っ!なんで、何で突然蹴るの!?」
 
だから、これは。
ただ―――足が滑っただけだ。
 
 
「あ、そーだ、留衣」
玄関まであと少しというところで、馬鹿はどんな両手をぽんと合わせてにやにやと笑う。
「……何」
「友達から聞いたんだけど、駅の近くに新しいケーキ屋ができたらしいんだよ。行ってみたくない、かな、かな?」
語尾が気持ち悪いのは何かの影響だろうから、もう突っ込む気力もない。
あとで二倍増しで殴っておこう。今は見える範囲に後輩がいるから無理だ。
私は別に甘いものが好きだというわけではない。もちろん神たるもの食材にも慈悲を向けなければならないので、よほどの代物以外は好き嫌いなどなく何でも口にするが、とりわけ食べたいかと言われるとそうでもない。
だからこの馬鹿が私にそう問う理由がいまいち分からない。……いや、分かるか。
この美しく完璧な私を連れて歩き恋人気分でも味わいたいのだろう。愚かだ。身分不相応だ。身の程を知れ。
しかしあまりに憐れすぎて逆に同情もしたくなってくる。
どうせこいつは騒ぐしか能のない蠅以下の生物なんだ。私が可愛がってやらなければ誰が面倒をみるのか。
この社会不適合な蠅は、女神たる私がその行動を見守り、真人間にしてやる必要があるのだ。我慢しなければ。
……付き合ってやってもいいかもしれない、と思ったのは、そんな理由からだ。……そのはずだ。
げた箱に着く。私は背後で何やらまだ喋っている馬鹿に対して、冷やかな視線でこう言う。
「……別にいいけど」
笑顔は見せてやらない。こいつが勘違いするからだ。
「本当!?なんか最近留衣ちょっと優しくなった?もしかしてついに俺に惚れごふうっ!」
他の人からは見えない絶妙な角度でその腹に拳を叩きこむと大人しくなった。廊下で悶絶しているが知ったことか。
……前言撤回してやろうか。そもそもこいつは笑顔なんか見せずとも調子に乗るのだった。きっと睨みつけたところで「いい!それもご褒美だっ!」とか言いだすのは目に見えている。こいつは懲りないのだ、忘れていた。
こうやって少し同情してやっただけで調子に乗るなんて、やはり下等生物だ。
私の相手にふさわしいはずもない。
だからこそ、多少は多めに見るべきなのだろう。
 
それにしても何と間抜けなのだろう。廊下を転げまわる姿はまるで毛虫だ。邪魔くさくて仕方ない。
こんな馬鹿とこれからも一緒にいなければいけないなんて、女神も楽ではない。
はあ、と溜息をついて、げた箱を開ける。
そこに入っているのは私の靴と、そして。
「……?」
手紙、だった。
白い封筒が、そこに当たり前のような顔で存在していた。
 
私へのラブレター、だろうか。直感的にそう思った。
珍しくもなんともないが、身の程知らずにもほどがある。
私は神だというのに、人間と釣り合うはずもないのに。
可哀想だから断るときには丁重にお断りしているが、それでも立場をわきまえていないことには変わりない。
ふう、と息を吐く。
「え、留衣それ何?ラブレター?え、え、見るの?ねえ?」
いつの間にか復活していた五月蠅い馬鹿は無視して、私は封を切る。
不安そうな声だった。こいつに関心などないが、普段騒がしいこの馬鹿が大人しくなると言うのはとても気分がいい。
この手紙がいわゆるラブレターであろうと、この女神たる私にとっては関係ない。
ただ、情をかける相手の名前くらいは覚えてあげないと可哀想だろう、そう思って見ているだけなのだ。
どうせこの人物が告白などという身の程知らずな行動を起こしてきたとしても、いつも通り笑顔で丁重にお断りするだけで―――
 
そこまで考えて、そこに書かれた文を見た私は。
「……え?」
―――言葉を失った。
 
違う。
これは断じて―――ラブレターなどではない。
これが一般的にいうラブレターならば……あまりにひどすぎる。
いくら低俗な人間とは言え、こんな愛情表現はしないだろう。
なぜなら―――
 
 
「都山留衣様
 
お願いします、死んでください。
私のために、貴方に死んで欲しいのです。
貴方がいると、私は幸せになれません。
だからお願いします、死んでいただけませんか」
 
ラブレターに、こんな不吉な文章が書かれているはずはないからだ。
 
しばしの沈黙。
私はしばらく、言葉を失っていたが、やがて。
怒りにまかせて、手紙を―――握りつぶした。
ふざけんじゃ―――ないわよ?
 
神たる私に―――完璧な私に死ね、ですって?
立場をわきまえない、どころじゃない。
これは神に対する冒涜だ―――不敬者が!
名前も名乗りすらしない愚民に―――私が殺せるとでも!?
恐怖などは微塵もなかった。
ただ私は、この無礼者に対する憎しみに満ち満ちていた。
誰に対して言っているの?
私よ?この都山留衣様に―――こいつは死ねと言いだした!
 
「……る、留衣……な、何があったんだ?……おーい、……留衣―?」
 
……いいでしょう。
調子に乗ってるんじゃないわよ、不届き者。
私のような神に死んで欲しいだなんて言ったこと―――後悔させてあげるわ。
絶対にこの手紙を書いた人物を見つけ出して―――降伏させてやる!
靴を嘗めさせ、土下座させ―――私がこの世界の唯一神だと認めさせてやる!
神は慈悲を与える存在だ。でも―――仏の顔も三度まで、でしょう?
 
「……る、留衣?どうしたんだ?お腹でもいた……ぐえっ」
その決意の証として、隣にいた馬鹿の腹に蹴りを入れておいた。
「な、何が書いてあったんだ?」
「……」
この馬鹿にわざわざ報告する義務はない。
だいたいこの下僕にどうしてものを教えなければならないのか。
「いやいや、留衣なんか怖い顔してたしさ……はっ、もしかして果たし状!?在野先輩を掛けて私と殺しあってください的な何か?いやあ色男は困ごはっ!」
とりあえず、人の気も知らないこの馬鹿を(頭部から)廊下へダイビングさせても文句を言われる筋合いはないはずだ。
 
……でも、ちょっと待って。
いくら私でも、一人で探すのには限界がある。
皆に厳しく問い詰めて回るわけにはいかない。私は女神であるが故に、常に冷静に、優しく振る舞わなければならないからだ。
……それなら、誰かに手伝ってもらった方がいいのかもしれない。
たとえば、……私の隣にいるこの馬鹿とか。
下僕とは必要な時に利用する存在だ。そして今がその時なのではないか。
もっともこいつは馬鹿だから大した役には立つとは思えない。しかしこいつにも一つだけ取り柄はある。
この馬鹿は、そのあまりの鬱陶しさが故か、顔が広いのだ。図書館の一件で分かるだろう。
もしかして、この忌まわしい手紙を私に残した人物にも心当たりがあるかもしれない。
確かにこいつは下僕だが、それでもこいつのほんの少しの取り柄くらいは認めてやる私はなんて心が広いのだろうか。まるで女神だ。女神だけど。
 
「……在野」
仕方ないから名前を呼んであげる。
本当はあんたなんかに個人名は必要ないと思うけどね、私は女神だから特別よ。
「は、はい!?な、何留衣」
「……私の言うことを聞きなさい、分かった?」
―――だから。
こいつのことも有益に利用してやろう。
こいつは馬鹿だ。駄目駄目だ。五月の蠅にすら劣る駄目男だ。役立たずだ。
だが―――女神の手にかかれば、できないことなんてない。
この馬鹿男を価値ある下僕として使うことくらい―――訳もないのだ。
「え、ええ、言うことって何!?命令!?それってやっぱり性的n……ごめんなさいすみませんそんなはずないですよねええええ痛い痛い痛い!」
馬鹿がこの私で不埒な妄想をしようとしたので腕をひねり挙げてやったら大人しくなった。
全く、下僕なんだから大人しく言うことだけ聞いていればいいの。
……余計なことなんて、言わなくていいわ。
 
そう、こいつは馬鹿だから。
私が、命令して『あげる』の。
「あんたは私の下僕として―――この不届き者を探し出すのよ、いいわね?」
 
そうよ、こいつを使えるのなんて―――私以外にいるはずなどないのだから。
 
 
 
 
  

あとがき!
第一章開始!これはまあ導入なので、そんなに長くはならないです。
主に留衣さんのデレを楽しむ回ともいう
自分で書いておいてなんですが足が滑ったはねーよwwwwwww

 

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