短めの一次&二次創作を思いついた時に更新します。本館はプロフィール参照です。
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バカテスのBL小説です。
秀明というより秀→明?
原作七巻ネタが含まれています、注意。
秀吉にキスされた。
……これだけ言えば、また馬鹿の妄想か、と思われるかもしれないけど、こればかりは本当だ。
本当だからこそ―――僕もまだ、この現実を認められずにいる。
Pretty/Bad Boy
※
それは、ほんの一時間ほど前。
無事鉄人達に野球で勝ち、体育祭も終わり、そのあとの地獄の郵送サービスを聞かされて少し経ったあと。
鉄人を実力でぶん殴りに行く計画を立てながら、僕たちは体育祭の片づけをしていた。
準備は変態……おっとじゃなかった、常夏先輩たちにやらせたけれど、さすがに片付けばかりはそうもいかない。ちょうど近くにいた美波と協力して、綱引きで使ったロープを倉庫に運び終えた、その時だった。
「明久、」
僕を呼ぶ声がした。聞き覚えのある可愛らしい声だ。
もちろんそれが誰か、馬鹿な僕でも分かる。
「……秀吉?」
そこにいたのはやっぱり、秀吉だった。
秀吉は確か、借りもの競争の道具の一部が演劇部の用具だったとか言って、それを片付けに行っていたはずだが。もう終わったのだろうか?
「木下、向こうは片付け終わった?」
美波が秀吉にそう尋ねると、秀吉はこくりと頭を下げた。
そこで僕は、秀吉の様子が少しおかしいことに気がついた。
……何か、落ち着かない様子に見えたのだ。
……どうしたんだ?野球には勝ったし、秀吉は家に郵送されてまずいものなんてないと思うんだけど……それとももしかして、郵送されるとまずいものがあったのか?スカートとかブラジャーとかキャミソールとかそういう女性的な何かが。それは大変だ。僕が責任もって回収しないと。
「ああ、じゃが、ちょっとばかし大荷物があっての、わし一人じゃ運べそうにないのじゃ」
秀吉はそう言う。ああ、それでちょっと困ったような顔をしていたのか。でもそれにしても、なんか少し違うような……?
「明久、よければ手伝ってくれんか?男2人の方がいいと思うんじゃ」
「でも木下、あんた持てるの?ウチがやってもいいけど……」
確かに秀吉はか弱そうだ。美波の方が力ありそうな……おっと、これ以上余計なこと考えたら美波に殴られる気がするぞ、自重自重。
「……あ、当たり前じゃ。ワシは男じゃからな!」
何故かちょっとムキになる秀吉。秀吉がか弱く女の子らしいのは事実なのになあ。
「そ、そう……?……じゃあ、ウチは先に戻っているね」
美波は自分で提案しておきながら、少しほっとした顔をして、グラウンドに戻って行った。まあ、美波も女の子だからな。できる限り肉体労働は避けたいのだろう。
そして、倉庫裏には僕と秀吉2人が残された。
他には誰もいない。本当に僕と二人だけだ。……二人きり。
…………って、余計なこと考えるから緊張してきたじゃないか……。これじゃ、まるで告白の一シーンみたいじゃないか!?こんな気持ちになるのは、秀吉が可愛いからだ。男のくせに僕を翻弄するなんて、秀吉は本当に罪な存在だ。
「で、秀吉、その荷物はどこにあるの?」
変態だとばれないように、僕は秀吉にそう尋ねる。いくら胸があるかもしれないとしても、今のところは一応男子(仮)だからね。さすがに女の子だという動かぬ証拠が出るまでは余計なことはしない方がいい。したいけどね。
「…………」
しかし、秀吉は答えない。
何故か下を向き、悲しそうに―――いや、違う。
悲しんでいるというより、……怒っていた。
眉を上げ、その可愛らしい頬をわずかに膨らませている。まるで、子供みたいだ。
……なんだ秀吉、どうしてそんなに可愛いんだ。
「ど、どうしたの秀吉?そんなに可愛い顔して―――」
ぴくりと、秀吉の肩が動いた。
そしてそのまま顔を上げ、僕と視線を合わせる。
僕の方は秀吉よりずっと背は高いから、それは必然的に僕が秀吉に上目遣いで見上げられる形になるわけで……。
…………そこには天使がいた。
よしムッツリーニ!早くここに来てくれ!そして写真を残して欲しい!今の僕はそれくらい幸せだ!
「……明久、……お主は、今、ワシのことを可愛いと言ったじゃろ?」
そして、そのさくらんぼのように熟れた愛らしい唇から、一言。
そんな言葉が、漏れた。
「……え、あ、うん」
……あれ、何だろう。
いや、秀吉が可愛いのは分かりきっていることなんだけどさ、なんだか。
秀吉が、いつもと違う……?
「それは、本気で言っておるのじゃな?」
「本気に決まってるじゃないか!」
即答した。そりゃそうだ、秀吉は可愛いのは世界の常識だからね。
だけど言ってから、僕はまずい、と思った。
何でかと言えば、そう言った瞬間、秀吉の顔が更に険しいものになったからだ。
ううん険しいと言うか……怒ったような―――それでいて、悲しそうな顔。
僕にはさっきから、さっぱりわからない。
どうして秀吉が、こんな表情をするのか。
もしかして、秀吉は僕を責めている?
考えたくはなかったが、そうとしか思えなかった。
心当たりは―――実は1つ、ある。
それは、僕との野球でのやり取りのことだ。
僕は秀吉とお風呂に入りたいと言ってテンションを上げていた。そのために頑張った部分も(一部だけど)ある。……はっ、もしかして……!
もしかして秀吉……そんなに僕と風呂に入りたかったのか……!?
そのあと僕が何も言わなかったから、怒っているのかもしれない。ああごめんよ秀吉、気づかなかった!
で、でもちょっと待って、秀吉に望まれて一緒にお風呂なんて……そ、そんなの刺激が強すぎて僕耐えられないよ!ムッツリーニなら一生分の鼻血を噴出してもおかしくないエロティックな図……!よし吉井明久、覚悟を決めろ。ここは男らしく据え膳を……。
「……わ、分かったよ秀吉!それならぜひ一緒に、」
いい、異端審問官に殺されても構わない!秀吉の可愛い裸体を拝めるのならば―――
そして、僕の言葉は、それ以上続かなかった。
正しく言うと、……続けさせてもらえなかった。
秀吉に、キスされたから。
初めは、何だったのか分からなかった。
何かいい香りのしたモノが、僕の嗅覚をくすぐっている、と思った。
後で気づいたけれど―――それは秀吉の髪の毛だったんだ。
秀吉のさらさらした髪が、ふわりと僕の頬に触れて。
そして―――
僕はそれが、かつて美波にされたものと全く同じ『行為』だと、気づいた。
「…………………………、」
頭の中が、真っ白になって。
僕は気付けば、その場にへたりと座り込んでいた。
ガンガンと、心臓が鐘のように鳴り、止まらない。
……何?
何が、あったの?
何で、え、今のって、え?
秀吉?
「…………ならば、」
秀吉は、僕の目の前にいた。
今にも唇と唇が触れあいそうな距離で、囁く。
その表情は、とても愛らしかったけれど、どこか小悪魔的だった。
「……もう、二度と、他の男に可愛いなどと、言うのでない」
そして、笑って。
「今度そんなことを言ったら―――こんなものでは済まさんからの?ワシは、男じゃからな」
それだけ、言って。
それだけ言い残して、秀吉は、―――僕の前から走り去った。
「……ひ……」
名前を呼ぼうとしたけれど、声にならなかった。
秀吉はいつの間にか、僕の前から忽然と姿を消していた。
「…………」
ああ、あれか。
未だにぼんやりとした視界と頭の中、僕は思いだした。
二人三脚のことか。野球なんかじゃなくて。
『だって、ムッツリーニは、……可愛かったからさ』
そんなことを、気にしていた。
馬鹿な僕が、つい口にしてしまった、そんな言葉を。
いつもいつも、男だと主張している秀吉は、そんな、それだけの、ことを。
「………………っ」
おかしいくらい、顔が熱かった。
美波にキスされたときだって、こうまではなかったはずだ。
足に力が入らなくて、立ち上がれないじゃないか。
全く、秀吉は可愛いなあ。
可愛くて、可愛くて、可愛くて―――でも、さっきは。
さっきばかりは―――あまりにも、かっこよくて。
秀吉をかっこいいと思ってしまったことが、認めらなくて。
やっぱり秀吉は可愛いなあ、と、呟くことしかできなかった。
あとがき
向こうから持ってきました。
バカテスでは秀明と康明康が大好きです。
いずれ康明も書きたいな!PR
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